根管治療前のCTの必要性

他院よりご紹介を頂いた症例です

左上5の根管治療を続けているが違和感が取れないとのこと

こういった場合にまず考えることは、本当に歯が悪いのかということです。

●歯が悪いのに歯科医師からは気のせいだと言われた
●治療をしたのに症状が改善しない
こういったトラブルは適切な診断がなされていないことが原因でしょう。

歯科治療に限らず医療においては診断が重要です。
適切な診断ができなけければ治療の方針が立ちません。
診断ができない状態で治療に踏み込むと治らないばかりか、歯の寿命を縮めてしまいます。地図の無い状態で航海に出るようなものです。

専門的な話になりますが、鑑別としては歯原性(歯の痛み)、非歯現原性(歯以外の痛み)を考えていきます。そこから歯が原因ということであれば、患歯の特定をしていきます。

通常、レントゲンでの診断には限界が伴います。
上記レントゲンではもしかしたら治療中の歯が悪いかもしれないけど、そうではないかもしれない。ちょっと怪しいがどうしようという不確かさがあります。



CTを撮影してみると、歯の先端部には明らかに骨の吸収が認められます。
医学的にはこの歯は病気で治療が必要なのですが、治療によりこれが改善するかは別問題なのが難しいところです。この辺りは治療前に十分な説明が必要です。

実際の臨床では確定診断がつかない、或いは複数の治療結果の末に最終的な診断がつくケースもあります。病態も一定ではなく、病状の進行に伴い変化をしていきます。
考えられるケースを患者さんに説明した上で診断を行い、最終的に妥当性の高い治療オプションを提示することが歯科医師の役割だと考えています。

実際には妥当性という言葉も難しいもので、患者さんの好みや社会状況、経済状況、1口腔での患歯の重要性、歯科医師の手技の程度、など考えていくと正解はありません。

歯医医師ごとで言うことが違うというのはこういう事情があります。
ただ、医学的な診断というのはそういった諸々に影響されずキチンとつける必要があります

診断:左上5根尖性歯周炎

こちらの治癒後に症状の改善がなければ、非定型性歯痛の疑いが強くなります。


こちらが治療直後。経過が楽しみです。

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