再根管治療の成功率

根管治療の成功率はどの程度か。

様々な調査が行われていますが、再治療に関しては62%〜84%sjogren et al.,1990 Strindberg,1956)とある程度幅がある形で報告がされています。

調査された際の時代背景(顕微鏡やCTの普及率)や国ごとの社会的背景(根管治療の質がどの程度なのか)などは現在の日本での治療環境とは当然違うので、参考にする程度に留めています。

こういった統計調査において重要なことは、どのような母集団を対象にしているかです。
例えば62%の成功率と報告をしたsjogrenの文献から抜粋をすると

The patient treated by the undergraduate student at the Department of Endodontics at the University of Umea during 1977,1978 and 1979

大学病院の歯内療法を専門とする診療科の大学院生が治療した症例を対象にしています。期間も1970年代と一昔前です。

専門の医療機関で丁寧に治療ができる環境でも、再治療での成功率は62%
それだけ再根管治療が難しいということです。

しかし、術前の状態が抜髄のケースや、術前透過像がない再治療などは96〜98%と非常に治療の成功率が高く報告がされています。
初回の抜髄を適切に行うことの重要性がよく分かります。


では、日本での診療環境はどうかということを考えると、やはり開業医での保険診療が中心の環境ですから再治療の成功率が62%を上回ることは考えづらいでしょう。
抜髄の成功率が96%という素晴らしい数字も無理です。
実際初診患者さんのレントゲン検査をしてみると、無髄歯の透過像は結構な頻度であります。ない人の方が珍しいくらいです。

スケールを更に小さくして、私の病院の診療環境を考えてみます。
飛び込みの抜髄のケースというのは開業後9ヶ月で0ケース、治療を行ったのはほぼ全てが過去の治療が上手く行かず症状がでた再治療のケースです。

つまり再根管治療が多い環境では、文献報告でいう成功率62%のケースを対象にして治療していく必要があるわけです。

大学病院での専門施設での治療環境を揃えて62%ですから、そうではない治療環境では成功率は更に下がるはずです。

何が言いたいかというと、根管治療というのは患者さんが思っている以上に難しい治療なので安易に手を出すものではないということです。
そして歯を残していくのであれば、専門的な環境での治療が望ましいということです。

根管治療のご相談が増えていますが、患者さんにはまずこういった説明をしております。

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